はじめに
とある資産グループ(以下、CGUという。)について簿価をゼロにするような減損処理を実施した場合に、そのCGUにおいて翌期以降追加で固定資産を購入するケースがあります。
減損後のCGUにかかる会計処理については、「固定資産の減損にかかる会計基準」及び適用指針には記載がありませんので、収益性の低下を理由に簿価をゼロにしたCGUにおいて購入した固定資産を新たに計上して良いものかと悩まれるケースがあると聞いています。
結論
結論としては、通常の投資と同じように、まずは固定資産を計上します。
その後、CGUに関して減損の兆候等が新たに識別されるのであれば減損テストに進むことになります。
どのように考えれば良いか?
このような基準に直接的な記載のない事項については、会計の大原則や基準の趣旨を汲んで判断することが必要と考えています。
以下は概念フレームワークからの抜粋です。記載された資産の定義(分解すると経済的便益流入の蓋然性とその取得原価の測定可能性)を満たす限り(通常購入資産はこの両方を満たすものと見做されます)、まずは資産計上をしなければなりません。減損したCGUに追加投資を行うということは、既存の減損済み資産と組み合わせて経済的便益が流入するものと考えられるためです。
資産とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源をいう*。
*ここでいう支配とは、所有権の有無にかかわらず、報告主体が経済的資源を利用し、そこから生み出される便益を享受できる状態をいう。経済的資源とは、キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉をいい、実物財に限らず、金融資産及びそれらとの同等物を含む。経済資源は市場での処分可能性を有する場合もあれば、そうでない場合もある。
財務会計の概念フレームワーク 第3章 財務諸表の構成要素 4項
(企業会計基準委員会)
そのうえで、減損会計の趣旨を見てみましょう。減損処理は「投資額の回収可能性を評価し、将来に損失を繰り延べないために帳簿価額を減額する会計処理」であり、たとえ減損済みCGUに含まれることとなったとしても、新規の取得資産については資産計上のうえ、既存資産との組み合わせによって得られる収益性について評価することが基準に沿った処理方法と言えます。
減損処理は、本来、投資期間全体を通じた投資額の回収可能性を評価し、投資額の回収が見込めなくなった時点で、将来に損失を繰り延べないために帳簿価額を減額する会計処理と考えられる
固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書 3項
なお、CGU減損時の将来計画に含まれていた主要な資産以外の資産の交換投資についても、減損との二重計上を避けるため資産計上するものと考えられます。
以上
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