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棚卸資産の管理~実地棚卸編~

目次

実地棚卸

事前準備 

 実地棚卸は事前準備が最重要です。多くても年に数回の業務のため段取りを忘れがちであったり、慣れてくると雑になってしまうので留意しましょう。

  • 実施拠点、日時、棚卸対象品、事前準備の責任者/担当者、当日のロケーションごとの責任者/担当者の整理
  • 在庫の整理整頓、ロケーション図の作成(各担当者のカウント範囲、二重カウント、カウント漏れ防止のため)
  • 棚札の準備(項目例:品目、ロケーション、勘定科目、数量、単位、ロットNo、カウント担当者、チェック者)
  • 入庫、出庫、その他敷地内/拠点間の移動在庫の制限
  • 異常在庫発見時の取り扱い

 在庫の整理整頓が実地棚卸の手間と精度を左右します。普段から意識しておきましょう。

  • 通常置くべき場所ではないところに在庫が置かれていないか(例えばバックヤードなど)
  • 顧客からの預かり在庫や貯蔵品、備品等の棚卸除外品は明確に区分されているか
  • 同じエリアに異なる部門の在庫が保管されている場合には明確に仕分けしてあるかetc

棚卸方法

 棚卸方法にはタグ方式とリスト方式があります。

タグ方式:

  • 棚卸票を用意し、ロケーションごとに通し番号を付します。
    補足:事前に必要な情報(在庫No、品目、数量、ロケーション、状態など)を印字しておくと当日いちいちカウントした情報を棚卸票に書かなくて良いので便利です。)
  • 現物をカウントし、用意した棚卸票を現物に貼り付けていきます。
  • ブランクの紙も用意しておき、事前に用意した帳簿在庫以外の在庫が発見された場合には当該在庫に貼付します。
  • 使用した枚数、書き損じ、未使用の枚数を記録しておき、現物を全てカウントし終わったら貼付した棚卸票を回収して網羅的に回収できたか確認します。

全ての在庫を見て回るので網羅性が担保できる。(棚卸票が貼っていない在庫に気がつきやすい)

手間がかかるので、少量の在庫又は十分な人員が確保できる場合に適している。

リスト方式:

  • ロケーションごとに在庫管理システムから在庫一覧を出力します。
  • 当該リストを見ながら在庫をカウントしていきます。

在庫に関する継続記録の精度が高い場合、効率的となる

リストに存在する在庫を探すことになるため、どうしても網羅性の観点からタグ方式に劣る。

 リスト方式では、二重カウントやカウント漏れを防ぐため、カウント済みの在庫には目印を貼ったり、リスト順に事前に在庫を並び替えておくなどの工夫が必要です。

棚卸中の留意点

 ヒューマンエラー防止の観点から必ず2人1組でカウントします。棚卸表やリストの訂正は必ずボールペンで行うことで改ざんを防止します。

 また、不良在庫が識別された場合には明確に記録しておきます。

棚卸終了後

 棚卸が終了したら帳簿在庫と実在庫との差異を分析します。まずは再カウントすることとなりますが、期中の入出庫処理誤りが原因となることも多く、分析結果をもとに普段の業務に改善点を落とし込んでいきます。

その他の論点

循環棚卸、期末日以外の棚卸

 多数の拠点が存在する場合や業務の繁忙期を避ける目的で期末日以外に実地棚卸を行う場合があります。重要な棚卸差異が生じる場合には期末日時点でもう一度棚卸を実施することを検討する必要があります。

実地棚卸には事前準備も含め多くの時間と人員が必要なため、継続記録の精度が高い場合、効率的となる。

継続記録の精度が低い場合、棚卸日から期末日までの期間が長ければ損益計算が歪となる恐れがある。

自動倉庫

 自動倉庫は棚卸時に一つずつパレット等を取り出しての現物確認が大変なため、棚卸時にも通常サンプルベースでの確認となることが多いです。このような手法は継続記録の精度の高さを前提とするため、入出庫時のダブルチェックやシステムを利用(バーコード読み取りやICタグの活用)した手作業の排除等により普段からミスが出ないようにする必要があります。

 仮にサンプルベースでのチェックにおいてエラーが棚卸差異が生じた場合、対象範囲の拡大を検討する必要があります。

積送中、拠点間移動中の在庫

 積送中在庫(例えばFOB条件で輸入している場合など)については、棚卸時点及び決算時点で当該情報を入手するための体制を構築する必要があります。また、システム上「移動中」や「積送中」のステータスを設け、現物が手元にないものについて所在が常にわかるようにしておきましょう。

外部倉庫や販売委託先への預け在庫

 外部倉庫を借りて在庫管理(入出庫含む)を委託している場合には委託先に実地棚卸を依頼し、在庫証明を取り寄せることが一般的です。

 これらの在庫に重要性がある場合などは、自社の人員が直接出向いてカウントすることも考えられます。

リモート棚卸立会

 海外子会社等、物理的距離のある拠点の実地棚卸状況についてリモートで確認することがあります。どうしても現地で確認するよりも難易度が上がるため、例えば以下の点に留意が必要です。

  • 映像が途切れないようにするための安定したインターネット環境が現地(倉庫内など)にあるか。
  • 撮影者の恣意性がどうしても介入してしまうため、確認できない在庫が生じないように複数のカメラが利用可能か、全体の映像を映すことができるかどうか。ロケーション図を事前に入手しておくことも重要。
  • 位置情報を利用して撮影場所が真に棚卸対象拠点であることを確かめる。

(参考:日本公認会計士協会 リモートワーク対応第2号「リモート棚卸立会の留意事項」3-10-2-2-20201225.pdf (jicpa.or.jp)

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