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棚卸資産の管理~期中の入出庫編~

目次

はじめに

 在庫管理はビジネスの基本であり、疎かにすると機会損失又は余剰在庫が発生したり、また適正な損益計算ができなくなってしまいます。

 この点、ヒューマンエラーをゼロにすることは決してできないため、可能な限りシステム導入により手入力を減らすことが肝要ではありますが、手作業が多く介在しているような場合の留意点についてもまとめてみました。

 なお、リソースの関係から月末等の一時点で手作業を行うケースがありますが、作業ボリュームが増えれば増えるほどミスが増えることと、また時間が経てば経つほどミスのチェックが難しくなるため、可能な限りタイムリーに入庫/出庫処理をしましょう。

典型的エラーと対策

入庫時

 誤謬による入庫時のエラーと対策を示しました。なお、不正を防ぐため、入庫時のカウント担当者とシステムへの受け入れ処理担当者の職務分掌は必須となります。

ケース1: 
 ベンダーが誤った数量や品目を持ってきたために、誤った在庫を入庫処理してしまう。
(発注がキャンセル/数量訂正されたのに何らかの手違いで納品されてしまうケース)

 このケースでは、検収担当者が最新の情報を購買システムで確認できる体制があり、かつ納品時に発注情報と照合することで防げます。
 多くの会社では購買システムが在庫管理システムと連携していて、購買システムから自動登録されていない在庫や異なる数量等の情報は在庫管理システムに入力できない統制となっている場合もあります。

ケース2:
 検収担当者が数量を誤ってカウントし、誤った数量で入庫処理してしまう。

 ケース1と同様に発注情報との照合や購買/在庫管理システム上の統制により、誤カウントに基づく入力を防ぐことができます。システム上の連携が無い場合で多数の在庫を日々処理しなければならない場合など、リスクの大きさに応じてダブルチェック体制を検討する必要があります。

ケース3:
 発注書(発注情報)、先方発行の納品書、納品数量(検収した数量)の全ては整合しており正しいが、検収担当者が誤った数量、品目、ロケーション等で入庫処理(システム入力)してしまう。

 これは手入力が介在するがゆえに発生するエラーですので、購買システムと在庫管理システム間の自動連係や、自社の購買システム/在庫システムに自動反映可能なバーコードが印字された指定の納品書を先方に使用してもらうなど、システム面で制御する必要があります。
 ただし、ロケーションの入力誤りなどのエラーについては、システム上の統制が効きづらい(納品書や発注情報と照合できない可能性がある)ため、場合によっては複数の担当者によるダブルチェックや検収担当者のシステムIDごとに当該情報の入力制限を課す必要があります。

ケース1~3共通:
 ヒューマンエラーは絶対にゼロにすることができません。購買/在庫管理システムが自動連携しておらず情報が一元的に閲覧できない/多くの手入力が介在するような場合は特に、後からトラッキングできるように、納品書No.と発注No.を紐づけてシステムに手入力するとともに、発注書と納品書の原本を整理して保管しておく必要があります。(重要な棚卸差異が出た際に原因を特定できるようにするため)
 また、重要な誤りを防ぐため、購買システム上の当日入庫予定額と実際の検収額/数量等を俯瞰的にレビューする統制も有効です。

ケース4:
 システムへの入力が遅いので決算のカットオフエラーとなる。

 入庫待ち等、何らかの理由で処理が遅れることは実務上よくありますが、一方で、受け入れ後については取引先への支払情報管理の観点からもタイムリーにシステム入力がなされるようルールを整備しておく必要があります。
 また、購買システム上の設定として、入庫(納品)予定日が過ぎても検収のステータスとなっていないものについて出力/アラートがでるように設定し、日々確認するようなルール設定も有効です。

ケース5:
 返品により入庫する商品や検査等のために顧客から預かっている商品の区別がついていない。

 まず、返品は販売管理システム上の返品処理を起点として行われるため、通常の仕入以外の入庫として倉庫担当者と連携できるようにしておきましょう。返品されてきた商品は再梱包や通常と異なる品質検査が改めて必要なケースもあることから、新品の仕入と同様のプロセスで受け入れて良いのかどうかや保管場所について決めておきましょう。

 また、棚卸時に帳簿との差異となりがちなのが、検査等の理由で顧客から一時的に預かっている商品です。これらの所有権は顧客にあり、帳簿上の自社在庫ではないことから、保管場所を明確に定め、受け入れ時にきちんと通常在庫と区分しておきましょう。

拠点内、拠点間の在庫の移動時

 在庫の移動について明確なルールが定められておらず、また、帳簿上の在庫保管場所(ロケーション)と現物の保管場所が異なる。

 拠点内又は複数の拠点間で在庫を移動させる際、在庫管理システム上、「移動中」のステータスを付与する必要があります。たとえば、拠点Aを出庫した在庫がBに到着していない場合、B側で受け入れ処理するまではシステム上Aの在庫になるため、このようなタイミングで棚卸を実施した場合、システム上明確にしていなければ棚卸差異となり、移動在庫に関する管理帳簿が別途存在しない限り差異要因の把握に時間を要する場合があるためです。

 また、不正防止の観点から、営業部などが顧客との兼ね合いで商品を持ち出すことがある場合には、承認ルールについて明確化しなければなりません。そのうえで、当該在庫に関するシステム上の取り扱い及びシステムが無い場合には別途管理帳簿を作成する必要があります。

販売出庫時

 出庫の際も入庫と同様です。販売管理システムと在庫システムの自動連係等により、可能な限り手作業を排除し、ヒューマンエラーの余地をなくしていきます。

 ①販売システム上の情報(受注No.、売上No.、出荷指示No.)、②在庫管理システム上の在庫の移動記録、③出荷された現物商品、④出荷記録(配送業者の受領印や顧客の検収書など)のいずれかが不整合となっている。

 出荷指示内容と出荷品が異なるという単純ミスについては、ピッキングリストに基づいて出荷担当者が在庫を用意し、別の担当者が確認及び出荷処理を行うことで防げるでしょう。

 また、配送業者への引き渡し時にはサインを受領し、販売システム上の受注No.、売上No.、出荷指示No.から原本をいつでもトレースできるように保管しましょう。
 自社トラックによる配達の場合には顧客への引き渡し/検収サインが根拠証憑になります。

 さらに、営業部による出荷指示についてルール(カットオフ時刻)を定めておくことも大事です。納期(出荷予定日)、出荷先、品目、数量等の急な変更があった場合の承認経路についても明確にしておく必要があります。

 細かい論点ですが、未出荷売上については、棚卸時に誤ってカウントしないよう、通常在庫と分けて保管し札等を貼るなど分かるようにしておきましょう。

廃棄/棚卸差異に関する報告と承認

 賞味期限切れ、保証期限切れ、損傷による品質基準を満たさなくなった等、在庫の廃棄は日常的に、また実地棚卸の結果に伴い生じます。このような在庫の処理について、現場の報告/申請→上長による承認→役員承認、あるいは稟議決裁を経るなど、金額的/質的重要性に応じて適切な承認フローを整備しておくことが必要です。

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